歯科医院の利益率は何%が理想?業界平均データと改善方法を徹底解説

📅 2024年12月28日
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歯科医院の利益率は何%が理想?業界平均データと改善方法を徹底解説
ざっくり要約
歯科医院の利益率について業界平均データ(25-45%)から改善方法まで詳しく解説。個人開業・法人の収益構造の違い、経費削減、自費診療強化など実践的なノウハウをご紹介します。

歯科医院を経営する上で、利益率は最も重要な経営指標の一つです。しかし、「自院の利益率が適正なのかわからない」「どうすれば利益率を改善できるのか」といった悩みを抱える歯科医院経営者は少なくありません。

本記事では、歯科医院の利益率について業界平均データから改善方法まで、経営者が知っておくべき情報を包括的に解説します。

歯科医院の利益率の現状と業界平均データ

歯科医院の平均利益率

歯科医院の利益率は診療形態によって大きく異なります。最新の業界データによると、以下のような傾向が見られます。

診療形態別の平均利益率

  • 保険診療中心の歯科医院:約 25%
  • 自由診療を含む歯科医院:約 45%
  • 業界全体の平均:約 32.8%

令和 3 年に実施された第 23 回医療経済実態調査では、個人開業の歯科医院の平均的な数値は以下の通りです。

個人開業歯科医院の平均データ

  • 年間売上:約 5,000 万円
  • 年間利益:約 1,600 万円
  • 利益率:約 33%

この数値は、歯科医院が適切に経営されている場合の一つの目安となります。

個人開業と医療法人の収益構造の違い

歯科医院の収益構造は、個人開業と医療法人で大きく異なります。

個人開業医院

  • 保険診療による売上:82.9%
  • 自費診療等による売上:14.6%
  • その他:2.5%

医療法人

  • 保険診療による売上:70.6%
  • 自費診療による売上:26.9%
  • その他:2.5%

医療法人の方が自費診療の比率が高く、これが利益率の向上に大きく寄与していることがわかります。

売上規模別の実態

歯科医院の売上規模について、2019 年に決算を終えた歯科診療所 332 件の調査では、以下のような結果が出ています。

  • 医業収益 1 億円超の歯科診療所:10.5%
  • 医業収益 5,000 万円以下:約 60%

多くの歯科医院が中小規模で運営されており、1 億円を超える大規模医院は全体の 1 割程度に留まっています。

歯科医院の利益率が低くなる 3 つの主要原因

歯科医院の利益率が低くなるパターンは、主に以下の 3 つに分類されます。

1. 全体的な売上不足

特徴

  • ユニット数 4 台以下で年間売上 1 億円未満
  • 新患数の不足
  • 稼働率の低さ

この場合、まずは売上の底上げが必要です。マーケティング施策の強化や診療時間の見直しなどが有効です。

2. チェア当たりの生産性の低さ

問題点

  • チェア 1 台当たりの月間売上が 200 万円を下回る
  • 診療効率の悪さ
  • 単価の低い診療に偏っている

利益を残している医院では、チェア 1 台当たりの月間売上は 350 万円以上を維持しています。

3. 経費管理の不備

よくある問題

  • 人件費率が 40%を超えている
  • 変動費率が 30%を超えている
  • 無駄な固定費の発生

経費管理の改善は、すぐに利益率向上につながる重要な要素です。

歯科医院の利益率を改善する具体的方法

自費診療の強化

自費診療の比率を高めることは、利益率改善の最も効果的な方法の一つです。

現状の自費率

  • 個人立歯科医院:平均 14.13%
  • 法人立歯科医院:平均 22.37%

自費診療強化のポイント

  1. カウンセリング体制の充実

    • 専任カウンセラーの配置
    • 説明用ツールの活用
    • 患者の悩みに寄り添った提案
  2. 技術力の向上

    • 最新技術の習得
    • 研修・セミナーへの参加
    • 専門性の高い治療の導入
  3. 院内環境の整備

    • 設備投資による治療の質向上
    • 快適な院内環境の構築
    • プライバシーに配慮した空間作り

経費削減のアプローチ

経費削減は以下のフローで進めることが効果的です。

STEP1:目標設定

  • 削減目標となる経費額を設定
  • 目標利益率を明確化

STEP2:費用分析

  • すべての費用項目を詳細に分析
  • 固定費と変動費の分類
  • 削減可能性の評価

STEP3:削減プランの立案

  • 優先順位の設定
  • 具体的な削減方法の検討
  • 実行スケジュールの作成

STEP4:実行と評価

  • 計画の実行
  • 効果測定
  • 必要に応じた修正

削減可能な主な経費項目

  • 水道光熱費(節電・節水対策)
  • 通信費(契約プランの見直し)
  • 消耗品費(在庫管理の最適化)
  • 事務用品費(無駄の排除)
  • 旅費交通費(業務効率化)
  • 材料費(余剰在庫の削減)

人件費の適正化

人件費は歯科医院の主要な経費項目であり、適切な管理が必要です。

適正な人件費率の目安

  • 労働分配率:25 ~ 35%(粗利に対する人件費の割合)
  • 人件費率:20 ~ 28%(売上に対する人件費の割合)

40%を超えると利益を残すことが困難になります。

人件費最適化のポイント

  1. 生産性の向上

    • スタッフのスキルアップ
    • 業務効率化
    • 適材適所の配置
  2. 評価制度の導入

    • 成果に基づく給与体系
    • インセンティブ制度
    • キャリアパスの明確化
  3. 外部委託の活用

    • 清掃業務
    • 経理業務
    • マーケティング業務

重要な経営指標(KPI)の管理

歯科医院の利益率を継続的に改善するためには、適切な KPI の設定と管理が不可欠です。

財務指標

1. 変動費率

  • 計算式:変動費 ÷ 売上高 × 100
  • 目安:20%以下
  • 主な変動費:材料費、技工費

2. 粗利率

  • 計算式:(売上高 - 変動費) ÷ 売上高 × 100
  • 歯科医院の平均:約 80%

3. 労働分配率

  • 計算式:人件費 ÷ 粗利 × 100
  • 健全ゾーン:25 ~ 35%

業務指標

1. 新患率

  • 新規患者の獲得状況
  • 月次での推移を追跡

2. 継続来院率(リテンション率)

  • 患者の定着度合い
  • 治療完了率との関連性

3. 自費選択率

  • 計算式:自費選択者数 ÷ (レセプト件数 + レセプトのない自費選択者数) × 100
  • 目標:20%以上

生産性指標

1. チェア 1 台当たり売上

  • 月間目標:350 万円以上
  • 最低ライン:200 万円

2. ドクター 1 人当たり売上

  • 生産性の目安
  • 技術力向上の指標

3. 1 日当たり患者数

  • 稼働効率の把握
  • 予約管理の最適化

PDCA サイクルによる継続的改善

利益率の改善は一時的な取り組みではなく、継続的なプロセスです。PDCA サイクルを活用して、常に改善を図ることが重要です。

Plan(計画)

  • 目標利益率の設定
  • 具体的な改善計画の策定
  • KPI の設定

Do(実行)

  • 計画に基づく施策の実行
  • スタッフへの周知・教育
  • 必要なツール・システムの導入

Check(評価)

  • KPI の定期的な測定
  • 目標との差異分析
  • 問題点の抽出

Action(改善)

  • 評価結果に基づく改善策の実施
  • 次期計画への反映
  • 継続的な見直し

まとめ

歯科医院の利益率改善には、以下のポイントが重要です。

重要なポイント

  1. 業界平均(25-45%)を参考にした現状把握
  2. 自費診療比率の向上
  3. 適切な経費管理
  4. 人件費の最適化
  5. 継続的な KPI 管理

利益率の改善は、単なる数字の改善ではありません。患者により良い治療を提供し、スタッフが働きやすい環境を整備し、医院の持続的な成長を実現するための重要な取り組みです。

定期的な経営数値の確認と改善施策の実行により、安定した歯科医院経営を実現していきましょう。