地域密着型!地方の歯科医院が「地方会」を最大限に活用する方法

2025年6月9日 更新
地域密着型!地方の歯科医院が「地方会」を最大限に活用する方法

地方都市や郊外で歯科医院を構える先生方にとって、日々の診療に加えて、スタッフマネジメント、そして医院経営と、そのご苦労は尽きないことと存じます。特に、都心部とは異なる環境下で、いかにして医院を安定的に運営し、地域住民の口腔健康に貢献していくか、常に模索されているのではないでしょうか。

そのような先生方にとって、大きな助けとなり得るのが、地域の歯科医師会、いわゆる「地方会」の存在です。

「参加した方が良いとは聞くけれど、具体的にどんなメリットがあるのか分からない」 「日々の業務が忙しく、なかなか参加する時間を捻出できない」

もし先生がこのように感じていらっしゃるのであれば、この記事が少しでもお役に立てるかもしれません。本記事では、多忙な院長先生が地方会を最大限に活用し、医院経営の新たな力に変えていくための具体的な方法について、改めて考えてみたいと思います。

なぜ今、地方会の価値が見直されているのか

地方会と聞くと、単なる地域の集まりというイメージをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、今日の歯科医療を取り巻く環境の変化を鑑みると、その役割は以前にも増して重要になっています。

1. 地域に根差した「生きた情報」の宝庫

全国規模の学会で得られる最先端の学術知識もさることながら、日々の臨床で本当に役立つのは、地域特有の症例や患者さんの傾向、さらには保険診療の細かな解釈といった「生きた情報」ではないでしょうか。地方会は、まさにそうした情報交換の場です。

近隣の小中学校の歯科検診でどのような傾向が見られるか、地域の高齢者施設で求められている口腔ケアは何か。こうした地域密着型の情報は、自院の診療方針や予防歯科への取り組みを考える上で、非常に貴重な羅針盤となります。

2. 孤独になりがちな院長の「同志」と繋がる場

医院経営者は、その責任の重さから孤独を感じやすい立場にあります。スタッフには打ち明けにくい資金繰りの悩みや、労務管理の難しさ。同じ立場の院長同士だからこそ、深く共感し、相談できることがあります。

「あの医院では、新人スタッフの教育をどうしているんだろう?」 「設備投資のタイミング、他の先生はどう考えているんだろう?」

こうした経営に関する悩みや成功体験、あるいは失敗談を共有できる仲間がいることは、精神的な支えになるだけでなく、自院の経営課題を客観的に見つめ直す良い機会にもなります。

3. 院内だけでは完結しない「地域医療連携」の基盤

高齢化が進む現代において、医科歯科連携や、専門性の高い治療における他院との連携は不可欠です。地方会での交流を通じて、近隣の医院の先生方の専門分野や人柄を知っておくことは、スムーズな患者紹介に繋がります。

緊急の対応が必要な患者さんが出た場合や、自院では対応が難しい症例に直面した場合に、気軽に相談できる先生が地域にいるという安心感は、何物にも代えがたい財産と言えるでしょう。また、災害時など、いざという時の協力体制を築く上でも、日頃からの関係構築が重要になります。

地方会で得たものを「医院の力」に変える具体策

地方会に参加して「良い話が聞けた」で終わらせてしまっては、あまりにもったいないことです。得た情報や築いた人脈を、どのように自院の成長に繋げていくか。その仕組みづくりが重要です。

ステップ1: 院内での「情報共有会」を定例化する

先生が地方会で学んできた新しい知見や地域の情報を、スタッフ全員に共有する場を設けることをお勧めします。例えば、月一度のミーティングの冒頭15分をその時間に充てるだけでも構いません。

「先日、地方会で〇〇先生から、最近の子供たちの間ではこういう口腔習癖が増えていると伺った。うちでも少し注意して見てみよう」

このように先生から発信することで、スタッフは地域全体の医療動向に関心を持つようになり、日々の業務に対する視座が高まります。結果として、医院全体の知識レベルの底上げと、チームとしての一体感の醸成に繋がるでしょう。

ステップ2:「To Doリスト」を作成し、実行計画に落とし込む

他の医院の取り組みを参考に、自院で実践してみたいことが見つかったら、それを具体的な行動計画に落とし込みましょう。

例えば、「A歯科医院で導入しているカウンセリングツールが良さそうだった」という情報を得たなら、まずは「A歯科のウェブサイトで詳細を確認する」「関連メーカーに資料請求する」といった小さな「To Do」に分解します。そして、それをいつまでに実行するか、カレンダーや手帳に書き込むのです。漠然とした「いつかやりたい」が、具体的な「次のアクション」に変わる瞬間です。

ステップ3: “顔の見える連携”を小さな一歩から育てる

地方会で顔見知りの先生が増えても、「そこからどう一歩踏み出せば良いのか…」と感じてしまうことはありませんか。人脈は、築くだけでなく「動かす」ことで初めて真価を発揮します。ここでは、明日からでも実践できる、小さな連携の始め方とその育て方について、具体的なステップで見ていきましょう。

アクション1(準備編): まずは「連携カード」を頭の中に作る

いきなり電話をしたり、紹介状を書いたりするのはハードルが高いと感じるかもしれません。そこで、まずは次の地方会や勉強会での会話を少しだけ意識的に変えてみることから始めましょう。

会話の中で、先生方の専門分野や得意な治療、導入している設備などの話題が出たら、それを「連携カード」として頭の中にストックしておくのです。

  • 「A先生のところは、マイクロスコープを使った根管治療に力を入れているんだな」
  • 「B先生は、訪問歯科で多くの実績があるのか」
  • 「C歯科医院は、新しい小児矯正のシステムを導入したらしい」

そして、会話の最後に「もし当院で対応が難しい患者さんがいらしたら、先生にご相談させていただくかもしれません。その際は、どうぞよろしくお願いします」という一言を添えてみてください。

これだけで、相手に「連携の意思がある」というポジティブなメッセージが伝わり、いざという時に相談しやすくなる土壌ができます。名刺交換だけで終わらせない、未来への布石です。

アクション2(実践編): 実際に相談・紹介を行ってみる

頭の中に「連携カード」がいくつかストックされたら、いよいよ実践です。大切なのは、完璧を目指さず、小さなケースから始めてみることです。

  • ケーススタディA:専門的なアドバイスを求める
    • 状況: 自院では対応経験の少ない、埋伏した親知らずの抜歯を希望する患者さんが来院。地方会で「大学病院で口腔外科に長くいた」と話していたB先生の顔が思い浮かびました。
    • 行動:
      1. まずは電話でアポイントを伺う: 診療時間中の忙しい時間帯は避け、昼休みや診療終了後を狙って電話をかけます。「お忙しいところ恐縮です。〇〇歯科の〇〇です。先日の地方会ではお世話になりました。実は、少しご相談したい症例がございまして、先生のご都合の良い時に2〜3分ほどお時間をいただけないでしょうか?」と、相手への配慮を伝えます。
      2. 要点をまとめて手短に相談する: 相談の時間をいただけたら、事前にパノラマ写真などを準備し、「かくかくしかじかの状況でして、先生でしたらどのようなアプローチを考えられますか?」と要点をまとめて質問します。長々と話さず、相手への敬意と時間をいただいたことへの感謝を伝えることが大切です。
  • ケーススタディB:患者さんを紹介する
    • 状況: 重度の歯周病で、再生療法などの高度な外科処置が必要と判断される患者さんが来院。「連携カード」にある、歯周病専門医のA先生に紹介するのが患者さんにとって最善だと考えました。
    • 行動:
      1. 患者さんへの丁寧な説明: まず、患者さんになぜ紹介が必要なのかを丁寧に説明します。「この症状をしっかりと治すためには、歯周病治療を専門にされている〇〇先生のお力をお借りするのが最善の道だと私は考えます。とても信頼できる素晴らしい先生ですよ」と、紹介先の先生を持ち上げることで、患者さんの不安を和らげ、前向きな気持ちで転院できるよう配慮します。
      2. 紹介状と事前の連絡: 必要な情報(主訴、検査結果、特記事項など)を記載した紹介状を準備します。そして、紹介状を患者さんに渡すだけでなく、紹介先の医院に一本電話を入れておくと、連携が格段にスムーズになります。「〇〇歯科の〇〇と申します。本日、〇〇様という患者さんを先生の所へご紹介させていただきました。紹介状をお持ちしましたので、お手数ですが、よろしくお願いいたします」
      3. 紹介後の情報共有を徹底する: 紹介は、紹介状を書いて終わりではありません。紹介先の先生から治療経過の報告があった際は、必ずお礼を伝えます。逆に、自分が紹介を受けた場合は、治療が一段落した時点で、紹介元の先生に経過報告とお礼の手紙や電話を入れる。この「報告・連絡・相談」のキャッチボールが、信頼関係を盤石なものにします。

連携が生み出す好循環

こうした一つひとつの丁寧な連携の積み重ねが、「あの先生は、いつもきちんと対応してくれる」という地域内での評判を築き上げます。それは、近隣の医科のクリニックや介護施設からの信頼にも繋がっていくでしょう。

小さな連携は、やがて地域全体を巻き込んだ「顔の見える医療ネットワーク」へと発展していきます。そしてその中心にいることは、医院経営における何よりの強みとなり、先生ご自身の臨床家としての視野を、さらに広げてくれるはずです。

多忙な院長が「戦略的に時間を作り出す」ために

ここまで地方会の重要性とその活用法についてお話ししてきましたが、多くの先生方が直面する最大の壁は、やはり「時間がない」という現実かもしれません。日々の診療に追われ、帰宅後はレセプト業務や経営に関する思索に時間を取られ、とても地方会に参加する余裕はない、と感じるのも無理からぬことです。

しかし、見方を変えれば、院長の時間を創出するためには、院長でなくてもできる業務をいかに効率化し、他のスタッフや仕組みに任せていくかが鍵となります。特に、予約の電話対応や変更の調整、患者さんへのリマインダー連絡といった、日々発生する定型的な業務は、大きな時間的コストになっているのではないでしょうか。

こうしたノンコア業務を効率化する方法として、近年、多くの歯科医院で導入が進んでいるのが、予約台帳システムです。例えば、中小規模の歯科医院の業務フローに寄り添う形で開発された「Hanavi」のようなシステムを活用するのも、有効な選択肢の一つと考えられます。

このようなシステムには、一般的に次のような機能が備わっています。

  • 24時間対応のWeb予約機能: 診療時間外や昼休み中でも、患者さん自身のスマートフォンからいつでも予約が取れるため、機会損失を防ぎます。電話対応の件数が減ることで、受付スタッフは来院された患者さんへの応対に、より集中できるようになります。
  • スタッフのシフトと連動した予約枠の自動調整: スタッフの急な休みや勤務時間の変更があった際に、手動で予約枠を調整する手間がなくなります。これにより、ダブルブッキングなどの人為的ミスを防ぐことにも繋がります。
  • 予約前日の自動リマインダー: 患者さんのうっかり忘れによる無断キャンセルは、医院経営にとって大きな痛手です。予約前日にメールやSMSで自動的にリマインダーを送信することで、キャンセル率の低下が期待できます。
  • 来院後のアンケート自動配信や経営状況の可視化: 治療後の患者さんの満足度を測るアンケートを自動で配信し、その声を集約することで、サービスの質改善に繋げられます。また、日々の診療データを基にした経営状況の分析機能は、先生が経営判断を下す際の客観的な材料を提供してくれます。

これらの機能を活用し、予約管理や患者さんへのフォローアップ業務を自動化することで、スタッフの業務負担が軽減されるだけでなく、院長自身も煩雑な管理業務から解放されます。そうして生まれた貴重な時間を、地方会への参加や、本来注力すべき治療技術の研鑽、医院の将来を考えるといった、より創造的な活動に充てることができるようになるかもしれません。

もし、こうしたシステムの活用による業務効率化にご興味があれば、一度詳しい情報をご覧になってみてはいかがでしょうか。

まとめ

地方会への参加は、単なる義務や付き合いではありません。それは、自院の成長と地域医療への貢献を両立させるための、未来への「戦略的投資」です。

日々の業務を効率化し、院長先生が本当にやるべきことに集中できる環境を整えること。それが、地方会という貴重な機会を最大限に活かし、地域で長く愛され続ける歯科医院を築くための、確かな一歩となるはずです。