インターネット上の口コミサイトや地図アプリのレビューは、今や患者さんが歯科医院を選ぶ上で非常に重要な情報源となっています。良い口コミは新たな患者さんを呼び込む力強い味方になる一方で、ネガティブな口コミへの対応を一つ間違えると、医院の信頼を大きく損なうことにもなりかねません。
特に、日々の診療で多忙な院長先生にとって、一つひとつの口コミに丁寧に対応するのは簡単ではないかもしれません。
しかし、口コミへの対応は、単なる「火消し」ではありません。未来の患者さんを含めた多くの人が見ていることを意識し、誠実な姿勢を示すことで、かえって医院の評価を高めるチャンスにもなり得ます。
この記事では、歯科医院の信頼を失いかねない「やってはいけないNG対応」を3つ、具体的な改善策とあわせてご紹介します。
NG対応1:ネガティブな口コミを無視・放置する
「どうせ事実と違うし、反論しても角が立つだけだ」 「忙しくて、いちいち対応していられない」
ネガティブな口コミを見て、このように感じてしまう気持ちはよく分かります。しかし、それを無視・放置するのは最も避けるべき対応です。
なぜなら、返信がないことで、口コミに書かれた内容を医院側が事実だと認めている、と他のユーザーに受け取られる可能性があるからです。「患者の声に耳を傾けない、不誠実な医院だ」という印象を与え、まだ見ぬ患者さんの来院機会を失ってしまうかもしれません。
どうすれば良いのか?
たとえ耳の痛い内容であっても、まずは「ご意見ありがとうございます」と、声を寄せてくれたことに対して感謝の意を示しましょう。その上で、口コミの内容が事実かどうかを院内で確認し、改善すべき点があれば真摯に受け止め、今後の改善策を具体的に示すことが重要です。
【改善例】
「この度は、当院の対応によりご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。ご指摘いただいた待ち時間に関しまして、院内で状況を確認し、予約管理のフローを見直すよう指示いたしました。今後は、患者様をお待たせすることがないよう、スタッフ一同、改善に努めてまいります。貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。」
このように、謝罪・原因究明・改善策の提示をセットで行うことで、誠実な姿勢が伝わります。
NG対応2:感情的に反論・言い訳をする
事実と異なる内容や、一方的な批判が書かれていると、つい感情的になって反論したくなることもあるでしょう。しかし、院長先生が個人としてではなく、「医院の代表」として公の場で反論するのは非常に危険です。
感情的な言葉や、患者さんを責めるような表現は、たとえ医院側に正当な理由があったとしても、他のユーザーからは「自分の非を認めない、高圧的な先生だ」と見えてしまいます。言い訳がましい文章も同様です。一度ついたネガティブなイメージを覆すのは容易ではありません。
どうすれば良いのか?
常に冷静かつ客観的な事実のみを、丁寧な言葉で伝えることを徹底してください。反論ではなく、「説明」をする姿勢が大切です。もし、事実と異なる点があるのであれば、感情を排して淡々と事実関係を述べ、誤解を解くことに注力します。
【改善例】
「ご指摘いただいた治療費に関しまして、ご説明が不足しており大変失礼いたしました。当院では、〇〇という理由から保険適用外の材料を使用する場合、事前に必ずご説明と同意をいただく手順となっております。しかし、今回はその点の確認が不十分であった可能性がございます。今一度、すべての患者様にご納得いただいた上で治療を進められるよう、説明手順を徹底してまいります。」
このように、医院の方針を丁寧に説明しつつ、今回の対応に不備があった可能性を認めることで、角を立てずに誠意を示すことができます。
NG対応3:誰にでも同じテンプレートで返信する
効率を重視するあまり、すべての口コミに同じような定型文で返信していませんか? 「ご来院ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。」といった返信は、一見すると丁寧に見えますが、どの口コミにも使える当たり障りのない内容です。
これでは、本当に口コミを読んでくれているのかが伝わらず、「誠意のない、機械的な対応だ」という印象を与えてしまいます。特に、具体的な不満が書かれている口コミに対してテンプレートで返してしまうと、火に油を注ぐ結果になりかねません。
どうすれば良いのか?
時間はかかりますが、一つひとつの口コミの内容をしっかりと読み込み、その内容に合わせた個別の返信を心がけましょう。患者さんが何に喜び、何に不満を感じたのか、そのポイントに具体的に触れることで、「ちゃんと読んでくれている」という安心感が生まれます。良い口コミに対しても同様に、個別の返信をすることで、患者さんとの良好な関係を築くことができます。
口コミ対策の鍵は「投稿される前」にある
ここまで、ネガティブな口コミへの対処法について解説してきましたが、最も理想的なのは、そもそもネガティブな口コミが投稿されない状況を作ることです。
患者さんがわざわざ公開の場である口コミサイトに不満を書き込むのは、「医院に直接言っても聞いてもらえないだろう」「この不満を誰かに知ってほしい」という心理が働くからです。
つまり、患者さんが不満を感じた際に、それを院内で直接、かつ気軽に伝えられる“受け皿”を用意しておくことが、極めて有効な口コミ対策となります。
そこで役立つのが、デジタルの力を借りた患者さんとのコミュニケーションの仕組み化です。
例えば、中小規模の歯科医院向けに開発された予約台帳システム「Hanavi(ハナビ)」のようなツールには、来院後の患者さんへ自動でアンケートを配信する機能が備わっています。これを利用すれば、患者さんはスマートフォンなどから手軽に治療の感想や医院への要望を直接届けることができます。
医院側は、集まった声をデータとして客観的に分析し、待ち時間やスタッフの対応、院内の清潔さといった具体的な改善点を発見できます。患者さんの本音を院内で吸い上げることで、不満が大きくなる前に対応でき、結果としてネガティブな口コミの投稿を未然に防ぐことに繋がるのです。これは、リスク管理であると同時に、患者満足度を向上させ、医院のサービスを磨き上げるための貴重な仕組みと言えます。
まとめ:誠実な対応が、未来の信頼を築く
口コミへの対応は、医院の姿勢が問われる重要なコミュニケーションの場です。NG対応を避け、一つひとつに誠実に向き合うことで、たとえネガティブな口コミであっても、それを見た他のユーザーからの信頼を得ることができます。
そして、より根本的な対策として、患者さんの声に日頃から耳を傾け、満足度を高める努力を続けることが、地域で長く愛される医院への一番の近道です。
患者さんの声をサービス改善に活かす仕組みづくりは、そのための第一歩です。
今回ご紹介したような、患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、満足度を“見える化”する機能にご興味があれば、ぜひ一度、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。