最近、初診で来院された患者さんから「インターネットの口コミを見て来ました」と言われる機会が増えたと感じていらっしゃる先生も多いのではないでしょうか。いまや、患者さんが歯科医院を選ぶ上で、インターネット上の口コミは非常に重要な判断材料となっています。
良い口コミは、新たな患者さんを呼び込む強力な集客ツールになる一方で、たった一つのネガティブな口コミが、医院の評判に影響を与えてしまうことも少なくありません。
しかし、多くの先生方が「患者さんに口コミの投稿をお願いするのは、どうも気が引ける」「催促しているようで、かえって印象を悪くしないだろうか」といった懸念や、「そもそも、日々の診療に追われて口コミ対策まで手が回らない」という悩みを抱えていらっしゃるのが実情ではないでしょうか。
この記事では、そうしたお悩みを抱える院長先生のために、金品を渡して口コミを書いてもらうような「やらせ」行為に頼ることなく、患者さんが自然とポジティブな口コミを寄せたくなるような医院づくりと、そのための「仕組み化」について、具体的なステップを交えながら解説していきます。
なぜ今、歯科医院に口コミ対策が不可欠なのか
かつて歯科医院探しは、家族や知人からの紹介、あるいは看板やチラシが主流でした。しかし、スマートフォンの普及に伴い、患者さんの情報収集の仕方は大きく変化しました。
特に、Googleマップをはじめとする地図アプリ上で歯科医院を検索する行動は、もはや一般的です. 多くの患者さんは、自宅や勤務先の近くで歯科医院を探す際、地図上に表示される医院のリストと、そこに紐づく星の数や口コミの内容を比較検討しています。
実際に、ある調査によれば、消費者の8割以上が商品やサービスを購入する前に口コミを確認するというデータもあり、これは医療サービスの選択においても例外ではありません。良い口コミ、特に具体的で心のこもった内容の口コミは、まだ見ぬ未来の患者さんにとって、先生の治療技術や医院の雰囲気を知るための貴重な情報源となります。
これは、MEO(Map Engine Optimization/マップエンジン最適化)と呼ばれる、Googleマップ上での検索順位を上げるための施策においても極めて重要です。口コミの数や評価の高さは、検索結果の表示順位に影響を与える要素の一つと考えられており、適切な口コミ対策は、Web上での医院の「見つけやすさ」に直結するのです。
「やらせ」は厳禁!ネガティブな口コミが集まる根本原因と向き合う
口コミを増やしたい一心で、業者に依頼したり、対価を支払って良い口コミを投稿してもらったりする「やらせ」行為は、絶対に行ってはいけません。こうした行為は、患者さんを欺くだけでなく、発覚した際には医院の信頼を根底から揺るがし、ポータルサイトの規約違反としてペナルティを受けるリスクも伴います。
大切なのは、なぜネガティブな口コミが書かれてしまうのか、その根本原因と真摯に向き合うことです。
ネガティブな口コミの内容を分析してみると、その多くはいくつかのパターンに分類できます。
- 「待ち時間」に関する不満: 予約したのに長時間待たされた、という声は非常に多く聞かれます。
- 「スタッフの対応」に関する不満: 受付の態度が無愛想だった、歯科衛生士の対応が機械的だった、などです。
- 「説明不足」に関する不満: 治療内容や費用について十分な説明がなく、不安を感じた、というケースです。
- 「治療」そのものに関する不満: 「痛かった」「思ったような結果にならなかった」など、治療の技術や結果に関する内容です。
もちろん、治療そのものへの不満は真摯に受け止め、技術研鑽に励むことが大前提です。しかし、それ以外の「待ち時間」「スタッフ対応」「説明不足」といった不満は、院内のオペレーションやコミュニケーションの仕組みを見直すことで、十分に改善できる可能性があります。
ネガティブな口コミは、いわば患者さんからの「改善提案」です。目を背けたくなるような厳しい意見こそ、自院の課題を浮き彫りにし、より良い医院づくりへのヒントを与えてくれる貴重なフィードバックであると捉えることが、口コミ対策の第一歩と言えるでしょう。
患者さんが思わず口コミを「書きたくなる」医院の3つの共通点
それでは、具体的にどうすれば、患者さんに「この医院の良さを他の人にも伝えたい」と感じてもらえるのでしょうか。特別なことをする必要はありません。日々の診療の中で、少しだけ意識を変えることで、患者満足度は大きく向上します。
1. 期待を少しだけ超える「感動体験」を演出する
患者さんは、歯科医院に対して「痛い」「怖い」といったネガティブなイメージを抱いていることが少なくありません。だからこそ、その予想を良い意味で裏切る体験は、強い印象となって心に残ります。
例えば、
- 受付での温かいお声がけ: 初めて来院された患者さんの緊張をほぐすような、マニュアル通りではない一言があるか。
- 徹底された院内の清潔感: 待合室や診療室はもちろん、パウダールームやお手洗いまで、常に清潔に保たれているか。
- 待ち時間への細やかな配慮: お待たせしてしまう場合に、前もって「あと〇分ほどお待ちいただけますでしょうか」と具体的な時間を伝え、雑誌やウォーターサーバーなどのアメニティを案内できているか。
- 丁寧で分かりやすいカウンセリング: 専門用語を避け、模型やイラストを使いながら、患者さんが納得するまで治療計画を説明しているか。
- 治療後のねぎらいの言葉: 治療を終えた患者さんに対し、院長だけでなくスタッフ全員が「お疲れ様でした。お大事になさってください」と声をかける。
こうした一つひとつの小さな積み重ねが、「この医院は、自分のことを大切に扱ってくれる」という信頼感と安心感につながり、「またここに来たい」「この先生に任せたい」というポジティブな感情を育みます。
2. 口コミ投稿をお願いする「絶好のタイミング」を見極める
患者満足度が高い状態であっても、どのタイミングで口コミをお願いするかは非常に重要です。
最も効果的なのは、治療が一段落し、患者さんが治療結果や医院の対応に満足感を抱いているタイミングです。例えば、ホワイトニングや審美治療が完了し、患者さんが鏡を見て喜んでいる時や、長期間の治療が終わり、解放感と達成感を共有している時などが挙げられます。
こうした瞬間に、「もしよろしければ…」と切り出すことで、患者さんも快く応じてくれやすくなります。
3. 依頼する際の手間を極限まで減らす「仕組み」を用意する
満足度の高い患者さんでも、いざ口コミを書こうとすると「どこのサイトに書けばいいのか分からない」「入力が面倒だ」と感じ、途中で諦めてしまうケースは少なくありません。
そこで重要になるのが、投稿までのハードルをできる限り下げてあげる工夫です。
例えば、院内の受付やパウダールームに、Googleマップの口コミ投稿ページに直接アクセスできるQRコードを掲示しておくのは、手軽に始められる有効な方法です。会計時にお渡しするレシートや、次回の予約日が書かれたカードにQRコードを印刷しておくのも良いでしょう。
その際、「皆様からいただく温かいお言葉が、院長・スタッフ一同の何よりの励みになります」「もし当院の対応にご満足いただけましたら、他の患者さんの参考にもなりますので、ご意見をお聞かせいただけると幸いです」といった、相手の善意にそっと寄り添うようなメッセージを添えることで、より自然な形で投稿を促すことができます。
口コミ投稿を「仕組み化」するデジタル活用のススメ
ここまでは、主に院内でのアナログな取り組みについて解説してきました。これらの工夫は非常に重要ですが、一方で、スタッフの個々のスキルや、その場の状況に依存してしまうという側面もあります。
「忙しくて、ついお声がけを忘れてしまった」 「Aさんはお願いするのが上手だが、Bさんは苦手意識がある」
こうした「属人性」を排除し、医院全体として安定的に、かつ効率的に口コミを収集していくためには、デジタルツールを活用した「仕組み化」が有効な選択肢となります。
例えば、中小規模の歯科医院向けに開発された予約台帳システム**「Hanavi」**のようなツールには、こうした課題を解決するための機能が備わっています。
Hanaviの機能の一つに、来院後の患者さんに対して、アンケートや口コミ投稿のお願いを自動で配信する機能があります。治療が完了した翌日など、満足度の高い記憶が新しいうちに、メールやSMSで自動的にメッセージを送ることができるのです。
この仕組みを導入することで、スタッフが一人ひとりにお声がけをする手間や心理的な負担はゼロになります。「お願いするのを忘れた」という機会損失も防ぐことができます。また、患者さんにとっても、対面でお願いされるプレッシャーを感じることなく、ご自身の好きなタイミングで落ち着いて意見を書き込むことが可能です。
もちろん、Hanaviは24時間対応のWeb予約機能や、予約日時の間違いや無断キャンセルを防ぐための自動リマインダー機能など、本来の予約管理業務を大幅に効率化する機能も充実しています。予約管理や来院後のフォローといった業務を自動化することで、スタッフは受付対応や患者さんとのコミュニケーションといった、本来最も注力すべき「人にしかできない温かい業務」に、より多くの時間とエネルギーを割けるようになります。
こうしたツールを活用することは、単なる業務効率化に留まりません。口コミ投稿のお願いを、個人の努力に頼るオペレーションから、医院全体の安定した「仕組み」へと昇華させ、継続的に医院の評判を高めていくための戦略的な一手となり得るのです。
ご興味のある先生は、一度詳しい情報をご覧になってみてはいかがでしょうか。
まとめ
良い口コミは、一夜にして生まれるものではありません。それは、日々の診療における患者さん一人ひとりとの真摯な向き合いと、そこで生まれた信頼関係の証です。
まずは、ネガティブな口コミに真摯に耳を傾け、自院の課題を洗い出すことから始めてみてください。そして、患者さんの期待を少しだけ超える感動体験を提供するための、小さな工夫を一つでも実践してみてください。
その上で、患者さんの善意を自然な形で口コミという「見える資産」に変えるための「仕組み」を構築していくこと。この両輪が揃った時、先生の医院は地域社会でさらに輝きを増し、多くの患者さんから末永く愛される存在へと成長していくことでしょう。
この記事が、先生の医院経営の一助となれば幸いです。