【歯科医院向け】患者さんの心をつかむ!「次も来たい」と思わせるリコール案内文の作り方

2025年6月9日 更新
【歯科医院向け】患者さんの心をつかむ!「次も来たい」と思わせるリコール案内文の作り方

歯科医院の安定した経営基盤を築く上で、定期的に来院してくださる患者さんの存在は、何にも代えがたいものです。しかし、「リコール案内を送っても、なかなか次の予約に繋がらない」あるいは「どのような文面が患者さんの心に響くのか、試行錯誤している」といったお悩みを抱えている院長先生も少なくないのではないでしょうか。

日々の診療やスタッフのマネジメントでご多忙の中、リコール案内の文章一つひとつにまで時間をかけるのは、簡単なことではないかもしれません。

この記事では、そうしたお悩みを抱える院長先生のために、患者さんが「またこの医院で診てもらいたい」と感じ、自然と次のアクションを起こしたくなるような、リコール案内文の具体的な作り方と考え方について、順を追って解説していきます。明日からの医院運営にすぐにお役立ていただける内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ今、リコール案内が重要視されるのか

すでにご実感されていることと存じますが、医院経営の観点から、既存の患者さんに継続して来院いただくことの重要性はますます高まっています。

一般的に、新規の顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5倍かかると言われています(1:5の法則)。これは歯科医院の経営においても同様の傾向が見られ、一度関係性を築いた患者さんに定期的に通っていただくことは、広告宣伝費などのコストを抑え、経営を安定させる上で非常に合理的な戦略と言えるでしょう。

また近年、患者さん自身の健康意識も変化しています。「歯が痛くなったら行く場所」から、「健康な状態を維持するために通う場所」へと、歯科医院に求める役割が変わりつつあります。この意識の変化は、予防歯科の重要性を後押しするものであり、リコール案内は、患者さんの健康維持をサポートするという医院の姿勢を伝え、信頼関係を深めるための重要なコミュニケーションツールとなるのです。

心のこもったリコール案内は、単なる「お知らせ」を超え、患者さんとの絆を育み、医院のファンを増やすきっかけとなり得ます。

【基本編】まず押さえたい、リコール案内文の5つの必須要素

効果的なリコール案内を作成するために、まずは基本となる構成要素を押さえることが大切です。どのような媒体(ハガキ、メール、SMSなど)であっても、以下の5つの要素を盛り込むことをお勧めします。

  1. 患者さんのお名前を正しく記載する 当たり前のことのように思われるかもしれませんが、これは最も重要な要素です。「患者様各位」のような一斉送信の文面ではなく、「〇〇 〇〇様」と個人名を冒頭に記すことで、案内は「自分ごと」として認識されやすくなります。手書きの場合はもちろん、システムから自動送信する場合でも、患者さんのお名前を正しく、丁寧に記載することが基本です。
  2. 前回の来院日と簡単な内容に触れる 「〇月〇日にご来院いただき、ありがとうございました」という一言に加え、「その後のクリーニング箇所の調子はいかがでしょうか」のように、前回の治療内容に少しだけ触れることで、医院側が患者さん一人ひとりのことを覚えている、というメッセージが伝わります。電子カルテの記録などを参考に、一言添える工夫が、パーソナルな印象を強めます。
  3. 次回来院の「目的」と「患者さんのメリット」を伝える なぜ次回の来院が必要なのか、その理由を患者さんの視点から伝えましょう。「定期検診のお知らせ」だけではなく、「〇〇様が生涯にわたって健康な歯で美味しくお食事ができるよう、前回のクリーニングから〇ヶ月後のチェックをお勧めしております」といったように、来院することが患者さん自身の未来の健康にどう繋がるのかを具体的に示すことが重要です。
  4. 具体的な「次回来院の推奨時期」を明記する 漠然と「また来てください」と伝えるのではなく、「次は〇月頃を目安にお越しいただくのが理想的です」と、具体的な時期を示すことで、患者さんは次の行動をイメージしやすくなります。「そろそろ予約しないと」という気持ちを、自然に後押しすることができるでしょう。
  5. 予約方法を分かりやすく案内する 患者さんが「予約しよう」と思ったときに、迷わず行動に移せるよう、予約方法を明確に、そして複数提示できるとより親切です。電話番号はもちろんのこと、診療時間外でも予約が可能なWeb予約システムの案内などを併記することで、患者さんの利便性は大きく向上します。

【応用編】患者さんの心を動かす3つのライティングテクニック

基本の5要素を押さえた上で、さらに患者さんの心に寄り添い、行動を促すためのライティングテクニックを3つご紹介します。

  1. 医院ではなく「あなた(患者さん)」を主語にする 文章の主語を「医院」から「患者さん」に変えるだけで、メッセージの印象は大きく変わります。 例えば、「当院では定期検診を推奨しています」という表現を、「〇〇様がこれからも快適な毎日をお過ごしいただくために、専門家による定期的なチェックをお役立てください」のように、あくまで主体は患者さんである、という視点で構成します。これにより、一方的な「お知らせ」ではなく、患者さんに寄り添う「ご提案」というニュアンスが伝わります。
  2. ポジティブな未来を想像させる言葉を選ぶ 人の行動は、不安や恐怖よりも、明るい未来や得られるメリットによって促される傾向があります。「歯周病が悪化する前に」といったネガティブな表現も時には必要ですが、「健康で美しい口元を維持するために」「自信を持って笑える毎日をサポートします」のような、ポジティブで心地よい未来を想像させる言葉を選ぶことで、検診へのモチベーションを高めることができます。
  3. 行動のハードルを下げる「優しい一言」を添える 予約という行動には、少なからず手間が伴います。その心理的なハードルを少しでも下げてあげる工夫が大切です。 「ご都合の良い日時をいくつかお教えいただけますと、スムーズにご案内できます」 「Web予約なら、24時間いつでもスマートフォンから簡単にご予約いただけます」 といった一言を添えるだけで、患者さんは「それなら連絡してみようかな」という気持ちになりやすくなります。複数の選択肢を用意し、患者さんにとって最も負担の少ない方法を選んでもらえるように配慮することが、思いやりとして伝わります。

リコール業務の「仕組み化」という視点

ここまで、患者さんの心に響くリコール案内文の作り方について解説してきました。しかし、院長先生の中には、「理想は分かるが、日々の業務に追われ、ここまで丁寧な対応を継続するのは難しい」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

案内文の作成、対象者のリストアップ、送付、そして予約の受付といった一連のリコール業務は、非常に重要である一方、多大な時間と手間を要するのも事実です。スタッフが手作業で行う場合、どうしても人的なミス(例えば、送付漏れやタイミングのずれ)が発生する可能性もゼロではありません。

こうした課題を解決し、スタッフが患者さんへの丁寧な対応といった、より本質的な業務に集中できる環境を整えるために、近年ではさまざまなデジタルツールを活用する医院も増えています。

例えば、中小規模の歯科医院向けに開発された予約台帳システム**「Hanavi」**のようなツールは、こうしたリコール業務の負担を大幅に軽減するための一つの選択肢となり得ます。あらかじめ設定したタイミングで、患者さん一人ひとりに合わせた内容のリコール案内を自動で配信したり、予約日の前日にリマインドメッセージを送ったりする機能が備わっています。

また、24時間対応のWeb予約機能は、患者さんがご自身の都合の良いタイミングで予約できる利便性を提供し、予約の取りこぼしを防ぐことにも繋がります。来院後の患者さんにアンケートを自動で配信し、その声を医院の改善に活かすといった活用法も考えられるでしょう。

こうしたツールは、単に業務を効率化するだけでなく、自動化できる部分はシステムに任せ、スタッフは患者さんとのコミュニケーションや、より温かみのあるサービス提供に注力できるという、好循環を生み出すきっかけにもなります。ご興味のある先生は、こうした便利なツールがどのような機能を持っているのか、一度情報収集をしてみるのも良いかもしれません。

まとめ

患者さんとの信頼関係を深め、安定した医院経営を実現するために、リコール案内は極めて重要な役割を担います。

今回ご紹介したように、患者さん一人ひとりに寄り添い、その方の健康な未来を願う気持ちを言葉に乗せて伝えることが、「次もこの医院に行きたい」と思っていただくための第一歩です。

まずは、現在お使いの案内文を少し見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。小さな工夫の積み重ねが、やがて患者さんの満足度、そして医院の未来にとって、大きな財産となるはずです。この記事が、院長先生の医院運営の一助となれば幸いです。